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【 Q 】 あさりレトルトに使用されているフィチン酸について説明して下さい。 |
【 A 】
フィチン酸は化学的合成品以外の食品添加物で、平成3年7月1日より表示の義務ができました。用途は金属封鎖剤(キレート剤)として缶詰、飲料、発酵食品、練製品、めん類などに用いられるほか、発酵助成剤、酸化防止剤、水の軟化剤、金属の防蝕、防錆剤として用いられています。製法は、米糠、トウモロコシ等より水で抽出し、精製したものです。表示は、用途一括名で酸味料又は pH 調整剤か本品名フィチン酸で表示されます。
あさりレトルトにフィチン酸が使用されている目的はあさりの黒変を防止するためです。あさりの黒変には細菌作用の介在しない化学的黒変生成機構と細菌の介在する細菌学的黒変生成機構があります。化学的黒変生成機構とは、あさりの生息する泥土からあさりの体内に移行した鉄とあさりの血液中の銅が、レトルトの殺菌加熱で発生した硫化水素と反応して黒変を生成するものをいいます。又、細菌学的黒変生成機構とは、あさりの生息する泥土に起源をおく耐熱性細菌群があさり消化管内に移行し、殺菌加熱後も残存してあさり血液中のヘモシアニンを分解して銅を遊離させ、あさり肉成分中のシステイン、シスチンも分解して硫化水素を生成させるので、硫化鉄または硫化銅による黒変が起こることをいいます。
あさりレトルトの黒変防止方法としては、①あさり腸管浄化法、②電気泳動法によるあさり腸内細菌の排出、除菌法、③食品添加物添加法などが考えられています。①及び②は細菌学的黒変に有効で、③は細菌学的黒変と化学的黒変の両方に有効であるといわれています。フィチン酸の添加は③の方法で他にメタリン酸ナトリウムの添加も有効であるといわれています。
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【 Q 】 あさりレトルトで、あさりの身や液が青みがかって見えましたが、 大丈夫でしょうか。
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【 A 】
ご心配をおかけしましたが、内容物については腐敗臭・異味もなく、化学検査や細菌検査でも鮮度低下などの傾向もなく、正常値を示しておりました。現物は、見方によっては灰色や緑色にも見えるようでした。過去も類似の事例はありませんので、メーカーに十分な調査を指示しましたが、明確な原因は残念ながら得られませんでした。
まず、疑われたピンホール、又は殺菌不良については、回収できたシール部分の切り口の検査と、内容物の検査で問題ないものと判断されました。レトルト物については、このシール部分の切り口の有無が苦情の原因の追及に大変役立ちますので、賞味期限の確認同様容器保存ご留意をお願いします。
メーカーの在庫品についても開封検査が行われましたが、当該品との同一状態のものはなく、
全品正常でした。
文献なども少ないのですが、おそらく次の2点が考えられます。
まず、魚介類や卵製品にみられる硫化黒変です。あさり、かに、えびなど軟体動物や甲殻類の水煮では、生息地の土壌中からその消化管内に移行した細菌により硫化水素が発生し、あさりなどに含まれる鉄、銅イオンと反応して肉質や液汁が黒~青色に変化することがあるとされます。
次に、グリーンフィールドという現象があります。あさり、かきなどの缶詰で、貝の内臓部から緑変を生じ、更には缶内全部が帯緑色を呈することがあるといいます。この現象は春先に多く、この時期に発生した特殊なプランクトンを食したためと考えられています。
今回の場合は、硫化黒変の可能性が高いように思われます。
あさりなどの水煮物のレトルト殺菌は、フィチン酸という有機酸の添加により pH 調整して殺菌効果を確実なものにしています。従って、硫化水素を発生する細菌やプランクトンなどの残留による害は見られませんが、発色した色調はそのまま残ることになります。
このような現象の防止策としては、原料の産地を選ぶことにあるとされています。今回の件についても事例としては少なく、断定はし難かったのですが、メーカーに対し今後の製造分の原料を産地別に十分調査し、工程検査を強化するよう指導しました。
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【 Q 】 紫いか鹿の子切りの内側が黄色くなっていますが、どうしてでしょうか。 |
【 A 】
これはイカの内臓に面しているため、黄色っぽい色をしているもので、別段品質上の問題はありません。製品の鮮度や細菌検査の上でも異常はありませんでした。
原料のイカは、紫いかの名の通り表皮は赤褐色をしていますが、鮮度の良いものの肉質は表面もクリーム色をしており、真っ白なもののほうが逆に不自然とも思えます。内臓に接した面は黄色い色が付着しやすく、加工工場では選別や水洗いなどである程度は少なくなるようにしていますが、鮮度の低下やうま味成分の流失の恐れもありますので、過剰な要求は難しいところです。
ただ、胆汁などにより一部が非常に黄色い場合などは見た目もあまり良くないので、製造者に対しては加工段階で極力混入を防止するよう申し入れを行いました。
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【 Q 】 いか短冊切りに、木の枝のようなものが入っていました。 |
【 A 】
ご指摘いただいたものは外見上は木の枝のようで、陸上で混入したものかと思われましたが、調べてみると海藻の一種と判りました。紅藻類の一種で、オキツノリ科のハリガネといわれるものの一部と考えられます。(図1)
これは太平洋沿岸などに分布し、高さ 15 ~ 45cm、体は円柱または平たくて硬く、両側に短い枝を羽状に出すことがあるといいます。名のとおり、枝の少ないからだが針金のようで、おし葉標本が台紙につかないそうです。
底曳網で原料のいかと共に揚がったものが、加工処理工程で見落とされ混入したものです。メーカーには十分注意して生産するよう、注意しました。
同様な海藻混入物でヒヨクソウというのがあります。(図2)
これは一見すると鳥の羽毛のようであり、カモメか何かの羽根と思われる形をしています。 このような海草類をはじめ、海中から様々な異物が一緒に水揚げされるため、メーカーでも従来より選別工程には気を配っているのですが、今回見落としがあったものです。
図1 |
図2 |
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【 Q 】 冷凍いか短冊切りを煮たところ、身がとけたようになって使えませんでした。 |
【 A 】
ご迷惑をおかけしました。早速同一ロットの在庫の鮮度を検査したところ、VBN、K値とも問題ありませんでした。
いかの身がくずれた原因は、原料に産卵直後のいかが混じっていたためと思われます。産卵直後のいかは通常のものよりタンパク質が少なく水分が多いことが判っています。いかの産卵の時期は春先から7月頃にかけてですが、今回のものはこの時期に獲れたものを冷凍保蔵しておいたものを3月に加工したものと推定されました。また、産卵直後のいかかどうかは外見からは全く判断できず、実際に煮てみないと判らないということです。
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【 Q 】 冷凍むきえびを使用したところ、身くずれしました。以前、解凍方法が大事 と聞いたのですがそのためでしょうか。色もややくすんで見えるのですが。
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【 A 】
むきえびの不適切な解凍調理による身くずれの件についてメーカーに解凍調理上の注意などを聞きましたのでご紹介します。
まず、むきえびの身くずれはえびの種類によって身くずれし易いものとしにくいものがありますが、天然のものではやむを得ないものであり、また大きな要因はやはり流水解凍からボイル調理にいたる前処理が十分でなかったことにあります。ボイルの際にお湯に対してえびの量が多い場合や、半解凍などえびの品温が低い場合はえびをお湯に入れてから再沸騰するまでに時間がかかるため、ムレた状態が長時間続き自己分解酵素が働いて、身に締まりがなくなり中身が溶けだしたような状態になることがあります。さらにえびの体表面の組織内に含まれていた臭気成分が出てきて、強い異臭がすることがあります。
ボイル時にはぜひ次の事項に注意をし、ボイル調理を行ってください。
①お湯は沸騰させ、たっぷりと使用してください。
②えびの量が多くならぬようにし、再沸騰までの時間がかかりすぎないようにしてください。
③流水解凍後、ボイルしてください。急ぐあまりの温水解凍は絶対やめてください。
実験的には、お湯にえびを投入後、再沸騰までに 10 分以上要した場合に身くずれや柔らかい状態になるものが見られ始めました。
なお、色調の件はまったく固体差であり、鮮度などには問題ありませんでした。本会の細菌検査や鮮度検査でも異常はありません。えびなど甲殻類が赤色を呈する物質にアスタキサンチンがあり、殻下表皮膜に多く含まれます。その量は漁場の環境の変化により大きな固体差が認められます。
逆に鮮やかすぎる赤色も心配される場合もありますが、同様に固体差の範囲です。本会のむきえびは中国・九州地区の共同購入品であり、規格検査によって鮮度の他、着色料などの検査も行っているものです。
メーカーに対しても衛生管理などの徹底を念押ししておりますので、今度ともよろしくお願いいたします。
[引用資料]
・「商品クレーム事例集」 コープこうべ・商品検査センター
・「消費者相談Q&A」 農林水産省
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【 Q 】 むきえびが白っぽくてやわらかく、いくら煮ても火がとおらないような 感じでした。
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【 A 】
いただいた現品を早速調査しましたところ、身の部分が半透明な感じであり、実際は充分に煮込んであるにもかかわらず軟弱な肉質であるのを確認しました。この現象は通称「やわらえび」といわれ、脱皮直後のえびが混入したものです。同一ロット品の細菌検査でも異常なく、別段鮮度が低下しているなどの物ではありませんのでご安心ください。以下、資料によって説明します。
甲殻類に共通のことですが、えびには成長の過程で脱皮という特殊な現象があります。元来脱皮は体の表面をおおっている硬いクチクラ層を脱ぎ捨てることで、体の増大をはかるためには絶対に必要な現象です。脱皮には大別して3つのケースがあるようです。
第1は文字通り成長するための脱皮で、体形変化を伴いながら成長脱皮が繰り返されていきます。当然、若い時期ほど脱皮間隔は短くなります。この脱皮に際しては、一般に著しい体重の増加を伴います。
第2は再生のための脱皮で、体に損傷を受けた場合などに著しい体重の増加を伴わないで、再生を主体としていると思われる脱皮現象があります。普通2~3回でほとんどが復元します。
第3は産卵脱皮で、もっぱら成熟した雌のみにみられる脱皮現象です。
脱皮の過程は、まず甲殻のカルシウムを血液中に溶出し、古い殻の下に柔らかい殻が準備されます。ついで古い殻が破れ、頭から抜け出ます。
脱皮直後は殻も身もまだ完全に硬くなっていない状態であり、水分を吸収して急速に伸長します。「やわらえび」はこの柔らかいえびを意味する古語で、江戸時代の中期頃から公文書に現れ現代に至るといいます。肉質も軟弱で、加熱による蛋白質の凝固もしにくいようです。このようなえびは出荷時の選別段階で除去すべきですが、軟弱さの程度もまちまちであり、多量の原料中に混じっていた場合選別は困難なようです。
他の防止策としては、「やわらえび」が混じってきた原料の漁猟海域のものは取り扱わないことです。しかしこれも広大な海域での大量なえびのことであり、実際は実施しにくいようです。
当然のことながらメーカーに対してはチェック体制の強化と原料品質の安定をはかるよう申し入れておりますが、ご使用になる際にもある程度やむを得ないものとしてのご理解をお願いします。
[引用資料]
・コープこうべ 「商品クレーム事例集」(1994)
・成山堂書店 「日本のエビ・世界のエビ」(1986)
・水産社 酒向昇著「えび・知識とノウハウ」
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【 Q 】 冷凍むきえびを油でいためてグラタンに使用したところ、臭気が強かった のですが。
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【 A 】
この件については一般家庭でもよく発生する事例らしく、原因について説明資料がありましたのでご紹介します。メーカーの調査回答の他、東京都発行の「食品の苦情Q&A」(平成3年)と、コープこうべ発行の「商品クレーム事例集」(1994)からも引用させていただきました。
おそらく、流水解凍からボイル調理にいたる前処理が十分でなかったため、えびの体表面のグレーズ(氷の保護膜)に溶け込んでいたり組織内に含まれていたりした臭気成分が、洗い流されずにそのまま料理に持ち込まれたものと考えられます。
まず、指摘されやすい原因としては、冷凍前の原料の鮮度や漁獲された海域でのプランクトンなどにより、原料自体臭気が強かったのではないかということです。
また、製造工程及び流通過程(消費者段階も含め)などに何か問題があったのではないかということなどがあります。しかし、今回の場合はえび自体の肉質などには特に変わった点は見られません。この品は中国・九州地区各県での共同購入品であり、同一ロットも含めた中での異常例はなく、細菌検査などでも問題はありませんでした。
えびには個体差によって強弱はありますが、トリメチルアミンやホルムアルデヒド、ジメチルスルフィドといった特有の臭気成分が含まれています。この臭気成分は、えびの殻のすぐ下、肉質の最も外側の組織に多く含まれています。従って、えびを調理する時にはまず流水で迅速に解凍し、ボイルすることでこの臭気成分を肉質に残さないようにすることが必要です。
なお、冷凍むきえびの解凍に関する事例としては、別に温水で解凍したことによる肉質の軟弱化と異臭の発生があります。肉質の軟弱化については、甲殻類のもつ強い蛋白質分解酵素が働いて自己分解が進んだ結果によります。また、この場合の異臭の発生原因は、特有の臭気成分が自己分解により組織外に出て強く感じられる他、逆に組織中に吸収されることにもなり、料理のなかでも感じられるもののようです。解凍時間が長かった場合は更に、微生物の働きに
よるアンモニアの発生などもあると思われます。
水産物での同様な異臭例は、むきあさりでも報告されています。これも鮮度などとは無関係で、流水解凍からボイル調理にいたる前処理が十分でなかった場合が多いようです。
えびに限らず、冷凍素材食品を調理する際には予め解凍・水洗・調味などの前処理をすることが必要で、このような手順は当然のこととして心がけておくべきと述べられています。前処理することにより素材の持つ様々な望ましくない臭気が除かれる他、素材特有の良い味覚を引きだすこともできるということです。
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【 Q 】 かなぎ佃煮のかなぎとは、どんな魚ですか。 |
【 A 】
かなぎとは、スズキ目・イカナゴ科のイカナゴのことです。地方によって呼び名は様々ですが、東京地方ではコウナゴ、仙台ではメロウド、九州北部、山口ではカナギと呼ばれています。生息地は、瀬戸内海以北から北海道の沿岸に分布しており、砂地に住み着いて繁殖します。12 月下旬から1月始めにかけて産卵を行います。孵化した稚魚は春先には3~4㎝に成長し、成魚は全長 15㎝程度ですが大きいものは 25㎝くらいのものもいるようです。
シラス干しのシラスとはカタクチイワシの稚魚のことです。カタクチイワシは、カタクチイワシ科の海水魚でイワシの仲間です。下あごが短く、上あごしかないように見えることから、この名が付いたようです。また腹部が銀白色で、背は青黒いことから、セグロイワシとも呼ばれています。生息地は日本各地、朝鮮半島、中国に分布しています。産卵はほぼ一年中行なわれ、生まれて間もない体が透明な稚魚をシラスといい、3~4㎝に成長したものをカエリと呼んでいます。成魚は 15㎝程度です。
カタクチイワシと同じいわしの仲間で形もよく似た魚にきびなごがいます。カクチイワシにくらべやや小さく、7~8㎝程度です。南日本から東南アジア、インドなどに分布する熱帯性の魚ですが、夏から秋にかけて黒潮にのってきたものが、和歌山県付近でもとれます。
それぞれの写真資料が入手できましたので、別図に掲げております。
これらの魚は鮮度低下が早いため生食用よりも佃煮、煮干し用として使用されることが多いようです。水揚げされた原料は鮮度低下を抑えるために塩茹でした後、天日干しを行います。
イカナゴの稚魚を干した製品をカナギチリメン、カタクチイワシの稚魚の場合シラス干しと言っています。
また、シラスよりも大きく小型のカタクチイワシを煮干したものはいりこといっているものです。原料としてはマイワシを使用することもあるようですが、品質は劣るようです。
規格開発物資であるかなぎ佃煮に使用している原料は、瀬戸内海でとれたイカナゴをカナギチリメンにしたものです。
[引用資料]
・杉田、他「日本食品事典」医歯薬出版
・住江、他「原色食品図鑑」建帛社
・河野「食品事典」真珠書院
・宝山食品工業㈱ 提供資料
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【 Q 】 かれい切身を煮たところ、軟化して溶けたようになったものが混じって いました。
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【 A 】
ご心配をおかけしました。ご指摘の切身を確認しましたところ、ゼリーミートではないかと思われます。ゼリーミートとは腐敗や鮮度低下とは関係なく、漁獲後の魚肉組織が軟化する現象で、食べても害のあるものではありません。冷凍魚類一般にみられるものですが、特にマグロ、
カジキ、かれい、鮭、メルルーサなどでの事例が多いようです。
メーカーなどの資料によると、ゼリーミートの原因には種々のタイプがあり、魚の生時は認められず、死後、氷蔵中に進行するもの、加熱調理中に進行するものなど、様々なものがあります。また鮮魚や切身の段階では事前に除去するための判別は困難です。大きく分けて胞子虫の寄生によるものと、自己消化によるものがあるようです。
粘液胞子虫は原生動物の一種であり、魚類の筋肉組織に広く寄生しているもので、生活史など不明な点も多いものですが、人体への害はないとされています。筋肉の中に胞子を作り、魚の死後にプロテアーゼによる組織崩壊をおこし、ゼリーミート化します。しかし、全ての魚体にこのような現象が起きるわけではありません。
自己消化によるものは、産卵後や漁獲時、あるいは回遊などで激しく運動して餌を摂取できない場合などに、自らの身体の蛋白質を分解してエネルギーを得ようとした場合にみられます。いわゆる自己消化活性が高くなっているその原料を使用した時、加工後に温度変化を受けて魚肉が軟化すると考えられています。
今回の原因は、現物の調査から胞子虫はみられないことから、自己消化によるものと推測されます。
一般的には、このような可能性のないなどの魚体を原料とすればよいのですが、前述のとおり、魚体や切身の段階では判別困難なため、切身製品の使用においてはある程度の発生はやむを得ないものともいわれています。結局、過去の経験上ゼリーミート化の可能性の少ない原料を選ぶより方法がないので、そのような現象をみた原料の産地や漁獲時期の関係調査を行うなどの対応が必要です。メーカーとしてもこの点に努力したいとのことです。
なお、現在は漁獲後の速やかな船上冷凍が行われているため、胞子虫に寄生された魚体や自己消化活性の高まった魚体でも、通常の加工や調理においてはゼリーミート化までは進行しないとのことです。ただし、調理・解凍時に肉の品温が室温又はこれをやや上回る温度になると、プロテアーゼの働きが活発になり速やかにゼリーミート化するとのことです。さらに、魚介類はプロテアーゼよる自己消化性の強いものが多く、冷凍品の解凍品温には注意を要します。この現象はむきえびを温水解凍してしまって溶けたという事と同様です。もし、たびたび起きるが、という場合にはこの点もご検討ください。
[引用資料]
・小長谷史郎、ニューフードインダストリー、巻 12 号(1982)
・恒星社厚生閣、須山 他編著、水産食品学(1987)
・恒星社厚生閣、野中 他編著、水産利用原料(1987)
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【 Q 】 さわらの切身の内側が黄色くなっているものがありましたが、どうしてでしょうか。
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【 A 】
確かに内側に黄色いスジ状の色が付着している切身が混じっていますが、これは鮮度低下や魚体の異常ではありませんので、ご安心下さい。
この黄色い色は、主に内臓から付着したものです。さわら以外でも、さばなどで同様な内出血の跡のような例がみられます。
漁業関係者によりますと、原因は漁場で水揚げされる際、押さえつけられた魚の一部で内臓が圧迫されて発生するようです。それも二つあり、内臓(肝臓、胆嚢)が傷ついて黄色汁が付着する場合と、食べていた餌により一部腹側の方から少し黄色く付着するものとがあるようです。この餌は主にカタクチイワシやイカナゴだとのことです。
さわらは従来対馬近海で水揚げされていました。しかし他の魚と同様にこれも最近は漁獲量が減少し、次第に漁場が遠方となり、今は黄海、東シナ海方面で 12 月~1月頃まで漁が行われています。その分、魚体も傷みやすい事情はあるようです。
加工メーカーにおいても、見かけだけの問題ではありますが、製造段階でできるだけ取り除くようにはしているとのことです。ご理解をお願いいたします。
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【 Q 】 いわしの梅煮に虫のような物が入っていました。 陸のものか浜辺で見かけるもののようですが、一体何でしょうか?
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【 A 】
これはイワシノコバンという一種のプランクトンです。名前のとおり、コバンザメのようにイワシに混じって生活しており、従ってイワシを漁猟すれば必ずイワシノコバンも多数入ってくるそうです。いりこなど、水産加工品の加工工場では手作業で除くしかないといいます。
分類上はエビ、カニに近い甲殻類の仲間で、甲殻綱・等脚目に属し、この中にウオノエ科として主に魚類と共生関係にあるウオノコバン類・エビノコバン・タイノエといったものがあり、魚のえらなどに寄生しています。その他にグソクムシ科のグソクムシ、コツブムシ科のイソコツブムシ・ウミセミなどがあります。いずれも名は体をあらわすのとおりですが、互いによく似ており、一見しただけでは区別しにくいようです。ただ、グソクムシ科はウオノエ科と同様、魚と共生し、コツブムシ科は通称磯虫と呼ばれるとおり沿岸に分布するものが多いようです。
従って、ご質問のものはイワシノコバンと判断されます。なお、あさりなどから発見されたものの場合はイソコツブムシと推定されます。
プランクトンは沖アミやエビ・カニの幼生、ウオノコバン類など大小雑多な生物の集まりですが、水産物に混入すると異物として扱われる困りものです。これらの混入する可能性のあるものは、イワシ加工品のほか、白す干、あさり、いか、えびなど多くのものにあります。
それぞれメーカー毎に、コンベアーの両側に多数の人を配してこの種異物の発見に努めるなど、十分わきまえて製造管理にあたっておりますので、よろしくご理解をお願いします。
なお、参考までにいくつかの図を載せます。実物は1~4㎝程の褐色に近い体です。
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【 Q 】 たらフライに赤い糸のような虫が混入していました。 |
【 A 】
ご指摘の虫は、魚をはじめとする水産物に見られる寄生虫の一種で、ラジノリンクス(鉤頭虫類)と呼ばれるものです。体長は2~3㎝で赤橙色をしており、カツオ、サンマ、サバなどの腸にも普通に寄生しているものです。サンマには、ラジノリンクス・ゼルキルキーが、タラ
では、エキノリンクス・ガジーがよく見られます。家庭でも内臓処理されていないサンマを調理する際、内臓付近に数匹見かけることがあります。
ラジノリンクスは、人に悪影響を及ぼさないことが知られています。また、ラジノリンクスを含めこのような寄生虫は、冷凍状態(-20℃で数時間)あるいは加熱(60℃で1分以上)することで死滅しますので、加熱調理したものを万が一、食したとしても人体に害を与えることは
ありません。
他にサバなどの寄生虫としてよく耳にするアニサキス(幼虫)がいますが、こちらは線虫類の一種で、白色をした1~2㎝程度のものです。サバの刺身やシメサバを食べて、腹痛等を起こすことで有名ですが、ラジノリンクスと同様に凍結と熱に弱いため、冷凍あるいは加熱によ
り死滅したものは心配ありません。
ラジノリンクスやアニサキスに限らず、水産物には数十種の寄生虫が見つかるといわれ、むしろ寄生虫のいない魚はいないともいわれます。その点はご理解いただきたいと思います。しかし、見かけ上不都合なものですので、メーカーには加工の際の除去努力を求めました。今後ともよろしくご利用をお願いします。
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【 Q 】 鮭塩焼に白い糸のような虫が混入していました。 |
【 A 】
ご指摘の虫は、魚をはじめとする水産物に見られる寄生虫の一種でアニサキス(線虫類)と呼ばれるものです。渦巻状の体長2~3㎝で半透明白色をしています。サバ、タラ、イワシなどの内蔵の表面や筋肉に寄生しているものです。成虫はクジラ、イルカなどの哺乳類に寄生し、虫卵が糞便と共に海中に放出され孵化すると、それはオキアミに摂取され、さらにオキアミごとサバ、タラなどに摂取され、内蔵や筋肉に寄生します。生きた状態のアニサキスを摂取すると腹痛、吐き気などを引き起こす場合がありますが、24 時間以上冷凍状態(-20℃以下)のものや中心部まで熱が通るように十分加熱(60℃で1分以上)調理したものであれば、アニサキスが混入していても死滅していますので、万が一、食したとしても人体に害を与えることはありません。
他にサバなどの寄生虫としてよく耳にするラジノリンクスがいますが、こちらは鉤頭虫類の一種で赤橙色をした体長2~3㎝のものです。カツオ、サンマ、サバなどの腸にも普通に寄生しているものです。ラジノリンクスは、人に悪影響を及ぼさないことが知られています。アニサキス同様に凍結と熱に弱いため、冷凍あるいは加熱により死滅しますので、心配ありません。アニサキスやラジノリンクスに限らず、水産物には数十種の寄生虫が見つかるといわれ、天然のものであれば、むしろ寄生虫のいない魚はいないともいわれています。魚類の生態環境か食物連鎖の一環として避けられないものです。その点はご理解いただきたいと思います。しかし、見かけ上不都合なものですので、メーカーには加工の際の除去努力を求めました。今後ともよろしくご利用をお願いします。
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【 Q 】 生わかめに、虫のようなものが付着していました。 |
【 A 】
ご心配をおかけしました。これは一種のプランクトン類で、あみと同類のものです。別に有害なものではありませんが、見た目が良くないものとして選別工程でのチェック強化を指示しております。しかし、時には、メーカー原料のロットにより、集中して混入・発見されることが続きます。
現在の生わかめは主に九州産の原料を使用しています。通常は冬2月位までに刈り採った原料を、産地で元茎・虫喰い部分の除去→湯通し→塩漬け→冷凍保管します。これを再度選別、カット、袋詰め後冷蔵し、製品化されます。
わかめの生育時には水中で様々なプランクトン類が共に生息しています。その中で混入しやすいものとして、ご指摘のプランクトン類がありますが、いずれもエビと同じ甲殻類に属します。それらの例として、あみ目あみ科のものや、端脚目よこえび科のものがあります。
あみ科のものは、大きさが概ね9~ 13㎜程度です。多くの種類がありますが、塩分、水温の変化に敏感で、比較的分布が狭いようです。有明海に多いのは、つのながはまあみです。
よこえび科のものは、大きさが概ね8~ 12㎜程度です。これも多くの種類がありますが、海産のものは沿岸の干潮線付近に多く見られ、砂中に浅い穴を掘って棲むものや海藻片を粘着させて巣を作るもの、また石の間や石の下に生息しているものなどがあります。九州に豊富に生息しているものの例として、にっぽんよこえび、ひめはまとびむしがあります。
このようにプランクトン類は海水温度や潮の流れなどの様々な要因でひとつの場所に多く発生することがあるため、養殖ロープが固定されていた位置によっては、今回のようにプランクトン類の付着量が多いわかめを刈り採ってしまうことがあるようです。
メーカーとして、今後も産地および袋詰め工程での選別を強化し、異物の発見など、製造管理にあたるとしておりますので、よろしくご理解をお願いします。
なお、水産資源としても重要なおきあみは、同じ甲殻類のおきあみ目という別の類に属しています。
図鑑からそれぞれの図が入手できましたので、ご紹介します。
[ 参考資料 ]
・「新日本動物図鑑中巻」岡田要也、北隆館、1982
あみ目
(MYSIDACEA) |
端目
(AMPHIPODA) |
全長:9~13mm
(例)つのながはまあみ |
全長:8~12mm
(例)にっぽんよこえび |
全長:10mm 前後
(例)ひめはまとびむし |
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【 Q 】 生わかめに、泥のようなものが付着していました。 何でしょうか。
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【 A 】
ご心配をおかけしました。これはプランクトン類の一種のよこえび類の巣です。一見したところ泥のようなものが付着したように見えますが、わかめが生育している海域に生息しているよこえび類がわかめに巣を作ったものです。有害なものではありませんが、見た目が良くないものとして原料の選別工程でのチェックを強化するよう指示しております。
しかし、時には、メーカー原料のロットにより、集中して混入・発見されることがあります。
現在の生わかめは主に九州産の原料を使用しています。通常は冬2月位までに刈り採った原料を、産地で元茎・虫喰い部分の除去→湯通し→塩漬け→冷凍保管します。これを再度選別、カット、袋詰め後冷蔵し、製品化されます。
わかめの生育時には水中で様々なプランクトン類が共に生息しています。その中で混入しやすいものとして、あみ目あみ科のものや、端脚目よこえび科のものがあります。
よこえび科のものは、大きさが概ね8~ 12㎜程度です。これも多くの種類がありますが、海産のものは沿岸の干潮線付近に多く見られ、砂中に浅い穴を掘って棲むものや海藻片を粘着させて巣を作るもの、また石の間や石の下に生息しているものなどがあります。九州に豊富に生息しているものの例として、にっぽんよこえび、ひめはまとびむしがあります。
プランクトン類が多く発生した海域で生育したわかめには、今回のようにプランクトン類の巣が付着したわかめがあり、そのまま刈り採ってしまうことがあるようです。
メーカーとして、今後も産地および袋詰め工程での選別を強化し、異物の発見など、製造管理にあたるとしておりますので、よろしくご理解をお願いします。
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【 Q 】 野菜昆布の表面にカビのような白い斑点がありました。 大丈夫でしょうか。
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【 A 】
確かに表面には、白い斑点状のものが見られました。この白い斑点はカビではなく、マンニットあるいはマンニトールと呼ばれる糖アルコールの結晶で、昆布に含まれる旨味成分ですから問題ありません。顕微鏡で拡大してみるとカビ特有の菌糸は確認されず、白い斑点の周りには
透明な結晶が見られます。
マンニットはアルギン酸とともに昆布中の炭水化物の大部分を占めています。昆布以外の海藻類、たまねぎ、人参などにも含まれます。この成分が昆布中の水分が蒸発する際に、水分とともに昆布の表面に出て結晶化したものであることが判りました。
現在この製品は、北海道の道東で採れた長昆布を原料としています。収穫時期は7~9月頃で、海から採取した昆布は天日で一日干し上げて乾燥させます。その時天候が悪く、乾燥が不十分であると昆布の中に水分を含んでしまいます。そして、保管中に湿度の変化が生じて昆布から水分が蒸発する際に、昆布の栄養分も一緒に出て、マンニットが結晶化します。また、十分乾燥した昆布でも、長期保存している間に湿気を帯びてしまうと同じ現象が起きてしまいます。昆布の表面がしっかりと乾燥していて身が締まっている間は内部に含まれる成分は出てきませんが、一度湿気を帯びて再び乾燥すると、水分とともに出てきてしまうのです。
マンニットは旨味成分ですので、結晶が析出していた場合でも水などで洗い落とさず、ふきんなどで昆布の表面に付いた埃などを軽く拭き取る程度で使用した方が良いと思います。
顕微鏡観察でマンニットの周りに見られた透明の結晶は、昆布中のグルタミン酸ナトリウムや塩が析出したものです。昆布に限らず、乾燥わかめでも、これらの成分が表面に付着していてカビではないかと心配されてお問い合わせいただくこともありました。これも同様に昆布の成分が水分の蒸発とともに表面に出て結晶化したものです。よろしくお願いします。
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【 Q 】 いりこの腹が割れて赤いものが詰まっています。油焼けとは違うよう ですが何でしょうか。
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【 A 】
これは油焼けなどの品質低下によるものではありませんので、ご安心ください。原因は、原料のいわしがアミ(エビの子)を腹いっぱい食べていたためです。加工時の煮沸でやや褐色になっているのが観察されますが、ご使用時の煮出しの際に更に赤くなって見え、腹が割れて赤い粒のようなものが浮き上がることもあります。
原料のいわしそのものの品質は、ご覧いただいてもお判りのとおり、光沢のある良質の魚体を更に念入りに選別したものです。アミが多い海域は砂地の、水が大変きれいな場所であり、いわしにとっても最も住み易いところにあたるそうです。従って、本来ならばそのような海域で取れたいわしは、腹いっぱいアミを食べてのびのび育った汚染の少ない良質のものであり、いりことしても最良の原料なのですが、ご指摘のような現象の元ともなっております。
しかしながら、ご心配をおかけするのは事実でもあり、メーカーとしても加工工程での選別を入念に行っております。
更に、本会ではせっかくの良質な原料によるいりこの油脂分劣化など品質低下防止のため、冷凍流通・保管を行っています。よろしくご利用をお願いいたします。
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【 Q 】 まぐろレトルトの中に、魚肉の表面が黒ずんでいるものがありました。 内部は正常な色調でしたが原因は何でしょうか。
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【 A 】
ご心配をおかけしましたが、現品を検査した結果は肉質の劣化ではなく、加熱殺菌時の変色現象であると思われます。
卵製品では時々見られますが、肉などの蛋白質を加熱することにより発生した硫化水素が、共存する鉄分と化合して硫化鉄を作り、これが灰色~青黒色の点状または斑状変色となって現れるものです。一見するとカビや汚れのようでもあり、心配されますが製品そのものは別に害はありません。予防法は鉄分との接触を断つことですが、調味料などからの移行もあり完全には難しいようです。
似た現象として青肉といわれるものがあり、やはり加熱によって魚肉が青緑色を呈するため問題とされますが、今回の場合はこれと違うようです。
また血合肉の除去不十分では、その部分が明らかな褐色の組織として残りますので判別できると思います。
レトルト製品は空気も光も通さない気密性容器を用い、密封した後加圧加熱殺菌したものです。従って発生する事故の大部分はピンホール等による腐敗、袋の膨張であり、一見してそれと判るものがほとんどです。
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