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【 Q 】 フードスタンプなど簡易細菌検査器具の、後処理方法を教えてください。 |
【 A 】
お尋ねのフードスタンプなどは、簡易とはいうものの基本的な細菌検査の方法と同等の原理に基づくものです。当然のことながら使用済みの器具をそのまま洗浄したり、細菌を培養した培地などを生ゴミとして安易に廃棄したりすることは、病原細菌を自然界にばらまき、自らの手で食中毒を引き起こす原因ともなる可能性があり、大変危険です。確実な手段による滅菌又は消毒・殺菌を行う必要があります。
今回は細菌検査を行った後の処理方法と注意点についてご紹介します。以下のいずれかの方法で完全に滅菌又は消毒・殺菌処理をした後に、適切な分別を施して廃棄します。
①高圧蒸気滅菌
専用の容器に入れ、オートクレーブを用いて、通常2気圧、121℃、15 分~ 30 分間高圧蒸気滅菌し、廃棄する。培地部分とプラスチック部分に分かれる。
もっとも推奨される方法です。料理用圧力鍋を用いても可能ですが、温度が 110 ~ 115℃位までしか上がらないので、時間をやや長めにとる必要があります。
②煮沸殺菌・消毒
培地などの内容物が飛び散らないようにして、十分沸騰している湯の中に入れ、30 分以上煮沸してから廃棄する。液体部分とプラスチック部分に分かれる。
処理中の培地に手を触れない、水ハネに注意するなど、火傷と菌を外部にとばさないような事故防止に注意が必要。
③薬液による処理
使用済みの培地などを、0.1%以上の次亜塩素酸ナトリウム溶液に投入し、少なくとも一夜以上放置した後廃棄する。概ね、液体部分とプラスチック部分に分かれる。廃液処理も適切に行う。
この場合も、処理中の培地に手を触れない、水ハネに注意するなど、菌を外部に飛ばさないような注意が必要。また、刺激性のガスが発生することにも注意が必要な他、処理量が多い場合や長時間放置することにより、溶液濃度が低下することにも留意ください。
実際の現場にとっては、①高圧蒸気滅菌の場合は装置の有無の問題、②煮沸殺菌は異臭がすることと、適当な場所が確保できない、などの問題があるようです。その点から、③薬液による処理が向いているのではないかという声も聞かれます。
また、いずれの方法も処理量が多い場合は効果が小さくなるので、数回に分けて行う必要があります。
ここで特に強調したいことは、原料素材、製品、器具、作業者の手指などから培養した細菌の取り扱いと処理です。例えば、一般生菌数を測定した培地は、その中に食中毒起因菌なども含まれていることが予想されます。しかも、元々は問題ない量であったものを、莫大な量に増菌しています。施設の一角で取り扱った細菌が、誤って自らを危険にさらしたり食品を汚染したりするようなことがあっては、何のために検査を行うのかその意義さえなくなってしまうので、十分その管理に注意していただきたいということです。
細菌検査は、実際の操作自体はそう時間はかかりませんが、準備と後始末にそれぞれ5倍以上の時間がかかるとされています。その時間を考慮して計画を立てる必要があります。フードスタンプなどの培地を使用することで、準備の時間は若干軽減されますが、後始末は手を抜くことはできません。検査終了後は完全に滅菌・消毒してから廃棄するという原則を厳重に守り、フードスタンプなどの簡易検査器材を用いて衛生管理に役立てていただきたいと願っています。
[参考資料]
・各種培地取り扱い説明書 日水製薬、デンカ生研など
・月間HACCPなど
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【 Q 】 増粘多糖類の働きや使用目的について教えてください。 |
【 A 】
増粘多糖類は、様々な機能を備えています。増粘多糖類には、増粘剤、ゲル化剤、安定剤として使用される天然由来の多糖類があります。その多糖類の使用目的などについて説明します。
まずは、増粘剤としての働きですが、ソース、ケチャップ、タレ類、漬物などのとろみを付ける目的で使用されます。安定性も同時に必要であればキサンタンガムが、でんぷん的な食感が必要な場合はタマリンドシードガムが、また特に安定性は必要なく粘度のみが必要な場合はグァーガムが使われるケースが多いようです。
次にゼリー、ジャム、プリンなどのようにゲル状に固めた食品を作る目的に使用される場合にはゲル化剤と呼ばれます。主に海藻由来のカラギナン、アルギン酸、寒天や、果実由来のペクチンが使われます。また、ゲル化機能を持たない多糖類でも、異なるもの同志を混合することによってゲル化できる場合があります。ゲル化剤として使われる場合には、数種類のものを併用することが多く、例えばカラギナンはローカストビーンガムと一緒に使用されます。
それから、ドレッシングの乳化、ココアの懸濁、アイスクリーム、ホイップクリームの泡沫などを安定させる目的で使用される場合には安定剤としての役割を持ちます。
増粘多糖類以外のものでは、ファーセレラン、アラビアガムなどもよく使われています。
ファーセレランは、紅藻類の一種であるススカケベニ科フルセラリアの全藻から抽出して得られた天然高分子物質で、多糖類を主成分としています。ジャム、ゼリー、プリンなどのゲル化剤として使用されます。ゲルの状態が寒天あるいはゼラチンに似ていることから、別名「デンマーク寒天」または、「植物ゼラチン」とも呼ばれています。
アラビアガムは、マメ科アラビアゴムノキまたはその同族植物の分泌液を乾燥して得られたもので、別名アカシアガムと呼ばれています。他の多糖類と比べ粘度はあまり高くなく、ガムシロップの安定剤、製菓関係では砂糖の結晶防止剤やつや出し剤として使用されます。食品以外では、事務用糊の成分としても身近なものです。
申すまでもありませんが、これらの増粘多糖類は、古い時代から世界各地のそれぞれの地域で食用として利用されていたものが、現代の食品工業的にも有用であると見出されたものです。安全性については問題ありません。
[引用資料]
・「天然添加物と新食品素材」食品化学新聞社
・「月刊フードケミカル」 食品化学新聞社
・「天然物便覧」 食品と科学社
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【 Q 】 トレハロースについて教えてください。 |
【 A 】
トレハロ-スとは、2分子のブドウ糖が結合して(α - 1,1結合)できた二糖類です。甘味度は、砂糖の約 45%で、天然系の食品添加物に分類されます。
自然界にも広く存在し、酵母、キノコ、エビ類、海草類などに多く含まれています。干し椎茸や乾燥ひじきがお湯や水に浸すことで元の状態に戻るのは、トレハロースの働きによるものです。
元々は酵母からの抽出で製造されていましたが、収率が低く、高価になるために食品に利用されることはあまり多くはありませんでした。その後、1993年にトレハロース生成酵素が発見され、じゃがいも、とうもろこしなどの澱粉を原料に、この2種類の酵素を利用して大量生産が可能となりました。そのため、従来と比べ低価格となり、ここ数年広く利用されるようになりました。
甘味料としてだけでなく、澱粉の老化防止、蛋白質の変性抑制、組織の安定化・鮮度保持など様々な目的で使用されます。非還元性で、しかも熱や酸性、アルカリ性に安定なため、砂糖のようにメイラード反応を起こして褐変することはありませんから、加熱処理や高温保存をともなう食品、飲料には適しています。
また、糖類ですから、砂糖と同じような特性を備えていますが、砂糖に比べ少ない量で十分効果があり、比較的取り扱いが容易なものです。今後、更に様々な食品に利用されていくものと思われます。
[引用資料]
「高純度含水結晶トレハロース」㈱林原商事
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【 Q 】 カレーを作ったあと、石けんで洗ったところが赤くなったので驚きました。 何が原因でしょうか。 |
【 A 】
いろいろ試してみたところ、中性洗剤では変色しなかったとのことでした。
お尋ねの件はカレー粉に配合されている香辛料の色素が、アルカリ性で黄色から赤に変わったものです。石けんはご存じのとおり、脂肪酸のナトリウム塩ですから、水溶液はやや強いアルカリ性(pH10)を示します。一方カレー粉は 20 ~ 40 種類の香辛料を混ぜ合わせて作られており、その配合によりさまざまな味わいをもったものがあります。従って主原料といえるものはこれといってないのですが、ターメリック(うこん粉)はほとんどの場合用いられているようです。これはカレー粉の黄色の素でもあります。ターメリックの色素はクルクミンといい、黄色色素として最近は他の食品にも使われることが多いようです。この色はアルカリ性では赤褐色となる他、マグネシウムと黄赤色、金属イオンと赤褐色に変色します。お尋ねの件もこの色素による変色と考えられます。
ターメリックは、しょうが科のうこんの根から得られたものです。同じような天然の色素として身近なものはしそがあります。一般に天然の色素は酸性・アルカリ性の違いや光、金属などで色調が変わることが多く、合成着色料と違って不安定です。
むしろ色が変わったり、褪色したりするくらいの方が合成着色料など入っていない証拠だと考えていただきたいものです。
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【 Q 】 パイン缶や黄桃缶を開けた時に細い針金のようなものが混入していることがありますが。 |
【 A 】
これは、缶詰を開ける時に缶切りによって缶材が切り取られたり、端が折れこんだ切り屑です。形状によっては危険なものですので、早急な対策が必要と存じます。
ご質問のような例は、缶詰業界だけではなく、公的機関や流通業界など様々な団体でも経験されているもののようです。実際に鑑定された現物の一つは、長さ約3mm、幅約 0.1mm の細長いもので、磁石を近付けると引き寄せられました。またガスバーナーなどで熱すると真っ赤になり、冷却すると元の形状に戻る性質がありました。更に元素分析を行ったところ、錫と鉄が検出され、缶に使用されている材質の金属組成とほぼ同じであることが判りました。また、切断面の詳細な観察により、錆びたり刃の欠けたような切れ味の悪い缶切りを使用した様子や、一部を切り残した缶蓋を折り取ったと思われることが判りました。
開缶した際に注入液面に浮かんでいたり、内容物の表面に付着していて、容器に移し替えた時に発見されることが多いため、元々缶の中に入っていたのでは?と思われ、ご指摘されるようです。先の鑑定でも、顕微鏡で拡大してみると金属を切断した際の光沢のある断面図が見られ、表面が腐食された感じではないことから、開缶する前から混入していたとは考えられないものです。また、缶詰のシロップに長時間触れていれば、金属片から脱錫し、分析しても錫はほと
んど検出されませんが、元素分析の結果を見ても混入していた可能性はないと思われます。
このような缶切りの切り屑が混入しないための、注意事項についての資料を入手しましたのでご紹介します。
- 切り粉の落下量の少ないものを選ぶこと。
- サビたり、刃の欠けたような切れ味の悪い缶切りは使わないこと。
- 缶を切るときは、缶の胴の部分などを傷つけないよう正しくていねいに取り扱うこと。
- 一度使った缶切りは、付着した食品のカスなどを洗うか、拭きとって除き、清潔に保管すること。
- 小径の缶については、なるべく小形の刃の缶切りを用い、特に注意して開けること。なお、缶詰のヘッドの外側
を切る缶切り歯車式以外のものを使用すると、切り屑が食品に落下することもありえるようです。缶の形態に適し た缶切り、また切れ味の良い缶切りを使用することが必要であるとともに、缶切りの使用後の清掃及び刃の調整・ 交換等の手入れを行うことが混入防止に繋がるとのことです。
併せて、よく発生している混入事例の切り屑の拡大写真とイラストを入手しましたので、ご紹介します。
[引用資料]
「缶切りの切り粉と安全性について」(社)日本缶詰協会
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【 Q 】 学校で抜取り検査を実施しましたので、冷凍食品の食品衛生法における成分 規格基準を教えてください。
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【 A 】
食品衛生法の「食品の規格基準(平成 25 年8月6日改正)」における冷凍食品の成分規格について説明します。
ここでいう「冷凍食品」とは、製造し、又は加工した食品(清涼飲料水、食肉製品、鯨肉製品、魚肉ねり製品、ゆでだこ及びゆでがにを除く)及び切身又はむき身の鮮魚介類(生かきを除く)を凍結させたもので、容器包装に入れられたものです。
①無加熱摂取冷凍食品・・冷凍食品のうち製造し、又は加工した食品を凍結させたもので、飲食に供する際に加熱を要しないとされていないもの
細菌数:100,000/g以下(標準寒天培地法)、大腸菌群:陰性 (デソキシコーレイト寒天培地法)
②加熱後摂取冷凍食品(凍結直前加熱)・・冷凍食品のうち製造し、又は加工した食品を凍結させたもので、無加熱摂取冷凍食品以外のもの
細菌数:100,000/g以下(標準寒天培地法)、大腸菌群:陰性 (デソキシコーレイト寒天培地法)
③加熱後摂取冷凍食品(凍結直前加熱以外のもの)
細菌数:3,000,000/g以下(標準寒天培地法)、E.coli:陰性(EC 培地法)
④生食用冷凍鮮魚介類・・省略
上記の内容が食品衛生法の規格基準として製品の衛生管理の基本となるものです。
抜取り検査を行った際、一括表示を確認されたと思いますが、その内容により検査項目と規格基準が決まります。冷凍野菜類や調理加工品(凍結前無加熱/加熱)で規格基準が異なりますので、項目選定や判断の際にご注意ください。
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